〈青春の風景〉



〈若き日の一期一会〉

 

昇一と美妃は高校生、美術部に入部していた。

昇一は高校3年生 大学の土木学科に進学が決まっている。

昇一は2歳下の美妃と付き合っていた。

 

昇一の近所の10歳年上の健さんが土木建設会社に勤務していて、

大学や社会へ出ての仕事の大変さ、又、工学系の土木や建築の世界に女性がいないので結婚問題の悩みを聞かされた。

「まともな結婚なんかできないんじゃないかと、結婚に対する不安で今、女の事ばかり考えているよ。」と言っていた。

大学の土木学科は実験やレポートに追われ殆ど遊ぶ時間は無い、夏休みも学校通いと言っている。

健さんの話では、社会に出れば土日の休みもろくにない。と聞いている。

 橋が出来上がった時の感動は素晴しいが、嫁さんはアルバイトで来た女の子に声をかけ上手くいけば結婚、

 ただろくに付き合った訳でも無く気にいった訳でもなく。結婚に対する焦りで結婚しただけ程度が殆どだそうだ。


  60歳位になると10人に5人は離婚しているという。殆どが仕事で生きている。

土木の世界は男の世界で女の人は殆どいない。多くの人は嫁さんをどうして探しているんだろうと思った。

 当たり前のことだけれど、良く考えてみると「女の人が土木や建築の世界にいるわけがない。」ただ俺には美妃がいるそう思った。

高校の授業の間の休み時間に美妃と人生を共にすることをいつも夢に見て考えていた。

ただ、もし美妃と付き合いをやめたらどうするんだろう。まだお互い高校生だし一抹の不安を感じた

 

卒業間近の二月

昇一             【今後どうする?】

大月の街を、二月の真冬の風に吹かれ紙屑が飛び交う中一時間くらい二人で歩いた。真冬の風は二人を冷え冷えと冷やした。

駅に近づいた時

 

美妃            〈やめる〉:予期せぬ言葉に昇一の頭の中は空白になっていた。

昇一 桑葉行きのバスが有った【桑葉だよね? 】

美妃            〈ウン〉

昇一            【元気でね!】

              【サヨナラ】:これ以上の言葉は昇一には見つからなかった。   

 

これでもう一生、二度と会う事は無いのかとむなしさでいっぱいだった。

 駅のホームに向かった。

  

 

〈心の風〉

 大月から上野原に帰る途中、車窓から見える真冬の寒々しくもの悲しい夜景が一層絶望感と言いようのないむなしさを感じさせた。

 遠くにうす暗くポツリと淋しげに灯る民家のあかりと、人間はしょせん一人なんだという孤独感とが重なって感じた。

 乾いた寒々しい心のむなしさの中涙も出ない。ただ言いようのない乾いた冷やかなむなしさだった。

 絶望感とむなしさの中、今にも小雪でも降りそうな寒々しい風が心の中を冷ややかに吹き抜けた。

 これでもう一生会う事は無いのか、全て終わりかとただ呆然と上野原の駅につくのを待った。

 

 

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